2007年11月7日水曜日

いまこの瞬間以外はすべてファンタジーである

なぜ<ことば>はウソをつくのか (新野哲也 PHP新書)  これはタイトルの面白さに騙されて買った本である。

この中で爽快なことばを見つけた。

いまこの瞬間以外はすべてファンタジーである


本としては(かなり)読みにくかったが、ところどころに痛快なことばがある。

『反省とは自己否定である』 

というのも これまた見事な言い方だ。


反省は 人々から生きる気力を根こそぎ奪い取る
反省は、自己関与しながら絶望の中へ沈殿する。




反省している自己は『今この瞬間』に居るのではなく、過去に居る。
過去の風景を見ている『私』は、 過去の自分の想起 以外の何かではない。

反省=自己否定している自己 は、やはり ファンタジーである。

『自己否定をしている自己』を否定するところまで行けば、絶望には至らない。

否定しなければならない という事ではなく、ただ、『今この瞬間』に戻れば、おのずから、その白々しさが露呈する。

コトバから抜け出した場所に居ることは 単純に 気持ちがいい。





似たような観点から、「Be here now」 という言い方がある。

「今ここに居なさい」という、そうしなければならない、そうすべきである、という強制力と、そうしておれば何かいいことが起こるとか、すばらしい境地に達することが出来るのではないか、というような 夢(幻想)の引き金を引きやすい。


今この瞬間以外はすべてファンタジー という、否定表現の方が 幻想を生み出さずにすむような気がする。


ポジティブ思考 は 中途半端なネガティブ思考と同じくらい、人を騙すのがうまい。

言い換えれば 反省とは 中途半端なネガティブ思考である。

これは、ポジティブ思考と同じくらい危ない。


ネガティブ思考を徹底すれば、「反省する者」が否定され、反省に使っている言葉すなわち 思考そのもの が否定され、否定されて消え去った絶望という思考があった場所=空っぽの空間 だけが 残る。

不思議なことに 「空っぽ」は なんとなく わけもなく ポジティブである。




第四章

ことばによる認識は、常に「A=B」ではなく「A≠B」 によって行われる。
だが、ことばの特質は異化や否定型である。
したがって意識やことばでとらえると、世界や他者は、異物となって現れる。
嫌いな理由は言葉で言えるが、好きな理由は言葉で言うことがむずかしい。



欲しいところだけを切り取るナイフのような道具を使って、誰かをを大切にしたり、可愛がったりする事は、出来ない事はないだろうけれど、物凄い注意力がいる。


それだから、注意力を使わない「ポジティブ思考」なるものには、ウソ臭さがつきまとうのかもしれない。

否定の為に 否定の道具(ことば)を使う分には、混乱はない。



言葉を使って、「じぶん」を認識すると、やはりそれは 異物として現れる。

コトバによる自己認識は即、自己否定なのだ。

だのに、語っているコトバそのものは否定されない。

中途半端な自己否定。



ことば の ウソが見えると その瞬間から 世界は爽快になる。

身体に 風が通る。

ことばに出来るのは それを表現することだけであり、
ことばを使って それを引き起こすことは出来ない。

1 件のコメント:

pukapuka さんのコメント...

あなたたちは言葉に頼りすぎています。私たちは言葉を信用していません。私たちにとってはあらゆるものを見て聞いて理解する方が、人の「言葉」を理解するよりも簡単なのです。「言葉」で話さなくても私たちは理解しあっているのです。「言葉」に頼るあなたたちの世界では人前では自分に正直にならないほうが賢明だと教えられ、みんな自分の「感覚の世界」を恐れるようになります。
「感覚の世界」では本当の自分がむきだしになるからです。そんなことをしたら、社会の中でうまくやれなくなり、人々からは笑われ両親からは叱られる。だからあなたたちは「感覚の世界」を忘れていくのです。
私はあなたたちと同じようになりたいとは思わないし、あなたたちに、ほめてもらいたいとも思いません。私は「私自身」になりたいのです。お互いにその権利があります。私は自分をばかにするのも、人をばかにするのも嫌いですあなたたちの世界だけが唯一だと考える傲慢さをやめてほしいのです。
ほんの少しでも私しか理解できないことがあるかもしれない。私には自然界の何かを感じ取ることができるかもしれない。それはあなたたちにとっても大事なことかもしれない。
お互いに自由でいれば、憎みあうこともなくなるでしょう。お互いに優越感を持たなくなれば、私から学べることもあるでしょう 二つの世界の架け橋はお互いにとって大切だと思います。

【ようこそ私の世界へ:自閉症の女性ドナ・ウィリアムズ】